現代のアロマセラピーに大きく貢献された4名。
『アロマテラピーの父』と呼ばれるガットフォセ。
『アロマテラピーの母』と呼ばれるマルグリット・モーリー。
精油を治療の一環として使用した医学博士のジャン・バルネ。
ロンドンにクリニックを開き、ホリスティックなアロマセラピーを広めたミシェリン・アルシェ。
マダム・モーリー、バルネ博士、マダム・アルシェは、『現代アロマセラピーの開拓者』とも呼ばれています。
ミシェリン・アルシェをご存じの方は残念ながら少ないように思いますが、アロマトリートメントをされる方にはぜひ知っておいていただきたいセラピストです。
現在日本で行われているアロマトリートメントは、ミシェリン・アルシェ女史からの流れといっても過言ではないでしょう。
ルネ=モーリス・ガットフォセ
(René-Maurice Gattefossé 1881~1950年)
フランスの調香師(化学者とする文献も多いがWikipediaでは調香師のみの記載)。
ガットフォセは精油の医療への利用に興味を持ち、医師による癒傷作用試験や臨床報告をまとめ、医師と共同でいくつかの論文を著す。
1937年、精油の医療面での利用に関するこうした研究を“Aromathérapie – les huiles essentielles hormones végétales”として発刊した。
『アロマテラピー』という言葉はガットフォセが命名。
同年、精油と芳香物質の「消毒・防腐・殺菌」の特性にテーマを絞り、Antiseptiques essentiels も発刊。
実験中に火傷を負い、その際にラベンダーを使用してその回復力に驚いて研究したという有名な話もある。
ラベンダー栽培や蒸留方法の開発にも力を入れ、第一次世界大戦中は軍の病院でも消毒薬として用いていた。
ジャン=バルネ
(Jean Valnet 1920~1995)
フランスの医学博士。
第二次世界大戦とインドシナ戦争で負傷者の手当てに精油を使用し、傷の回復や感染予防に著しい効果をあげる。その後は民間の病院でもアロマテラピーを行う。精神病の治療にも取り入れた。
1964年、L’Aromatherapie ou Aromatherapie, Traitement des maladies par les essences des plante(『ジャン・バルネ博士の植物=芳香療法』)を発刊。
彼は、精油の香りにではなく、その薬理効果を重視していた。
マルグリット・モーリー
(Marguerite Maury 1895~1968)
オーストリア生まれの生化学者。
夫は第一次世界大戦で戦死、その後息子と父も失い、看護の道へ進む。
後にホメオパシーの医師と再婚。
フランスのシャバーヌ博士の”Les Grandes Possibilites par les Matieres Odoriferantes ” (芳香物質の大きな可能性、1835年)やルネ=モーリス・ガットフォセの『芳香療法』(1937年)といった書籍に影響を受け、精油を植物油に希釈するオイルマッサージを美容に用いることを考案した。
また、彼女は中国やインド、チベットの伝統医学も取り入れていた。
当初はskin rejuvenation(皮膚の若返り)を目的としていたが、オイルマッサージを受けたクライアントからそれ以上の効果が多く報告されるようになったという。
精神面における精油の効能にも関心を持つようになる。
やがて、イギリス、スイス、フランスにスクールを開き、後進を育成。
Le Capital “Jeunesse”(『生命と若さの秘密』)を1961年に出版。
ミシェリン・アルシェ
(Micheline Arcier 1923~2006)
1959年にある美容関連の会議でマルグリット・モーリーに、1964年にジャン・バルネ博士に出会い、大きな影響を受ける。
ミシェリン・アルシェはマルグリット・モーリーから指導を受けた数少ないうちの一人である。
著書におけるモーリーについての記述は、彼女がいかに感銘を受けたかを示している。
“She had a magnetic personality. I had always been attracted by a more natural way of life, in a word that was becoming increasingly polluted, and she made me realize that aromatherapy was exactly what I had been looking for.”
また、ジャン・バルネ博士からはアロマセラピーの医療の場における有効性を学ぶ。
バルネ博士とミシェリン・アルシェは、フランスの地方で幼少期を過ごし、葡萄畑やオリーブの木に囲まれ祖母から植物療法についての知識を受けたという共通点があったようだ。
『ホリスティック』という言葉が一般的に知られるようになるかなり以前から、二人はこれを提唱してきた。
ミシェリン・アルシェは1961年にロンドンのナイツブリッジにクリニックをオープンし、バルネ博士の協力のもとマダムモーリーから受け継いだアロマセラピートリートメントを提供していく。
イギリス王室からロイヤルワラント(英国王室御用達)を受け、アロマトリートメントの心身における効用はそのその後イギリスに広まり、1990年代に日本にも伝わることとなる。
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私がイギリスで師事したのは、偶然にもこの『ミシェリン・アルシェ』で20年ほど働き、指導も行っていた英国人セラピストでした。
彼女からの言葉、手技、彼女の経験を学べたことは、アロマセラピストとしてどれほど幸運なことだったか、今でもその巡り合わせに心がふるえるような感動を覚えます。
今は亡き先人たちの業績や彼らの書いた書籍を目にすると、彼らの『アロマセラピー』が確かに私の中に息づいていることを感じます。
(英語の文章を読むと、かつて何度も聞いた言葉そのままだったりするため、まるで彼女の声が聞こえてくるような気がすることさえ)
ロンドンの『ミシェリン・アルシェ』でマダムアルシェの娘のクリスティンから施術を受けました。
その体験の貴重さも、時間が経てば経つほどに実感します。
私が受け継いだアロマセラピーをお会いできる方に少しずつお伝えしていければ、と願っています。
写真:
The Illustrated Encyclopedia of Essential Oils(Julia Lawless)
Aromatherapy(Micheline arcier)